朽ちて尚圧倒的な建築

先日、神奈川県で打ち合わせがあった帰りに、箱根に寄ってザ・プリンス箱根(旧箱根プリンスホテル)とそこから歩いて20分ほどのところにある箱根樹木園内にある休憩・レセプシヨン施設を訪れました。

 

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1978年開業のホテルと1971年竣工の休憩所、どちらも村野藤吾さん設計の建築物です。

 

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どちらも素晴らしい建築ですが、約40年経った今ではこの2棟の建物の様相は大きく違っています。

 

ホテルは現在も多くの宿泊客が利用し、そのクラシカルかつ素材感漂う建築が圧倒的な存在感を放っています。
休憩所のほうは、、、かなり前に閉館となり今では茅葺の屋根が落ち、苔が生して、廃墟となっても尚、圧倒的な存在感を放っています。

 

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外観の森に溶け込むような素材と、高貴な品格のあるしつらえの内観とのギャップが激しいこの休憩所は、独特な雰囲気を感じさせます。
朽ちて森に溶け込みそうになるほど、その独特な雰囲気が際立っているように感じます。

 

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建築当時は、天皇陛下の来訪を予定して設計されたということもあり、芦ノ湖を望むレセプションスペースという用途であったということです。
イタリア南部アルベロベッロの民家の円錐屋根トゥルッロを彷彿とさせる外観は、日本的という素材としつらえで見事に森と同化しています。
内観も絢爛豪華というわけではなく、クラシカルな落ち着いた気品さを漂わせています。

 

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現在も稼動しているホテルに劣らない、圧倒的な存在感。
朽ちても枯れない建築とは、設計思想が強く漂うかどうかということなのかもしれません。

 

機能性が失われた建築でも、思想が強ければ、朽ちても圧倒的な建築であると認識できました。

 

久々に心に染みた
とても素晴らしい寄り道でした。

 

 

 

 

カテゴリー : 日本建築

投 稿 日 : 2016年8月1日